
Tesla, Inc (TSLA)は4月22日に2025年第1四半期(Q1)決算を発表し、売上高・利益ともにLSEGの市場予想を下回った。売上高は193.4億ドルとなり、予想の211.1億ドルを下回ったほか、一株当たり利益(EPS、調整後)は0.27ドルと、予想の0.39ドルを下回った。
しかし、市場の反応は明らかに異なるものだった。S&P 500(SPX)を市場全体のセンチメントの代理指標とみなすなら、Tesla株に対する強気姿勢は次のようにまとめられる。決算発表前の週は、市場全体の出来高がTesla株の出来高をおおむね上回っていた。しかし決算発表前日から週末(25日)にかけて、この関係はほぼ完全に逆転した。

出典:Themes ETFsによる分析、2025年4月28日時点
金曜日(すなわち25日)は、決算発表後の株価および出来高のパフォーマンスにおいて最大の一日となった。株価は決算発表日と比べて約20%、出来高は約38%それぞれ上回った。
トレンド分析
一見すると、これほど大きなセンチメントの改善を正当化する材料は、貸借対照表のトレンドの中には見当たらない。

出典:会社情報、Themes ETFsによる分析、2025年4月28日時点
現在の初期トレンドが続けば、今会計年度(FY)の売上高は前年から20%減少して着地する見通しである。なお前年の売上高もほぼ横ばいであった。売上原価も同程度の減少率で着地する見込みだが、営業費用は8%増加する見通しだ。
営業費用の増加を牽引しているのは研究開発(R&D)費の拡大であり、これは同社に一貫して見られる特徴である。市場で通用するバッテリー式電気自動車(BEV)という市場そのものを事実上創出した実績を踏まえれば、これは高く評価されるべきトレンドと言えるだろう。販売費及び一般管理費(SG&A)は比較的厳格に管理されている。
純利益は大きな圧迫を受けている。2024年の純利益は前年度比で半減した。2025年第1四半期の純利益4.09億ドルのトレンドが続けば、今年度の純利益は前年度の4分の1程度で着地することになる。この背景にある大きな要因が、現在54億ドル規模とされるAIインフラ構築への継続的な支出である。前会計年度末からの過去3カ月間で、有形固定資産(工場・不動産・設備)の総額は4.5%増加し、そのうちAIインフラは5.2%増と最も伸び率の高いセグメントの一つとなった。また既存製品の製造関連の工具・治具およびAI関連資産は14%増加した。同期間の建設仮勘定全体は7.8%増加して73億ドルとなり、AIおよびAI関連活動向けの追加施設が含まれているとみられる。
BEVの世界において、Tesla製品は自動車市場全体で見て「低価格帯」の製品とは言えない。米国・西半球における最も安価なモデルの販売価格は約44,000〜55,000ドルであり、近い位置づけのModel Yは中国で約35,000〜45,000ドル程度で販売されている。「高価格帯」のModel SやCybertruckに注目が集まりがちだが、同社の生産・販売の大半を今なお牽引しているのは「比較的安価な」モデル群である。

出典:会社情報、Themes ETFsによる分析、2025年4月28日時点
「比較的安価な」モデルと「高価格帯」のその他モデルとの間で、Tesla社は2022年以降おおむね19対1の生産・納車比率を維持してきた。Cybertruckなど新モデル投入時には「その他モデル」の納車台数が一時的に押し上げられることはあるものの、この比率は概ね安定して推移している。2025年第1四半期には「その他モデル」の納車台数に減少の兆しが見られ、現在のトレンドが続けば前年度比40%減で着地する見通しだ。一方、「比較的安価な」Model 3/Yの納車台数は、24%減で着地するトレンドとなっている。
「比較的安価な」セグメントでは、この1年ほぼ絶え間なくフェイスリフトやアップグレードが行われてきた。直近で大きな話題を呼んだ(そして比較的評価の高い)モデルが、年初に中国・アジアで発表されたTesla Model Y「Juniper」1であり、一部のレビュアーはこれを「Cybertruckのフェイスを持つModel Y」と評している。

出典:CarSauce、2025年4月28日時点
とはいえ、納車台数全体には明らかな減少の初期兆候が見られる。生産と納車のわずかなずれは、今後工場の稼働が抑制される可能性を示唆している。在庫のトレンドを見ると、納車動向に対して在庫過剰の状態にあることが分かる。

出典:会社情報、Themes ETFsによる分析、2025年4月28日時点
納車の減速が続けば、生産能力は在庫積み増しではなく、現在保有する原材料・製品在庫の消化へと向かうことになるだろう。
なぜ株価は上昇したのか
米国国家道路交通安全局(NHTSA)が公表したレポート2によれば、Teslaは北米で最も垂直統合度の高いメーカーの一つであり、米国で販売される全モデルの部品(金額ベース)のうち65〜75%が米国内で製造されており、残りは主にメキシコで製造されている。一方でバッテリーについては事情が異なり、多くのバッテリーパックが何らかの形で中国を起源としている。この点については、テキサス州ロブスタウンで建設中のリチウム精錬プラントによって、ある程度は今後対処されることになりそうだ。同プラントはフル稼働時、100万台分の車両バッテリーに必要なリチウムを精錬できる能力を目指している3。プラントは今年中の稼働開始が見込まれている。
対照的に、デトロイトの「ビッグスリー」は、米国市場向け供給において米国外(北米域内ではあるものの)の工場への依存度がより高い4。今月上旬に執筆したトランプ大統領の関税戦争に関する記事で述べた通り、この関税戦争は数年に及ぶ困難な取り組みとなる可能性が高く、景気後退を引き起こすこともほぼ確実視される。現行ラインアップに関して、Teslaはおおむね安全な立場にある。ただしTesla SemiやCybercabといった今後のプロジェクトについては、当初中国への依存度が高かったとみられ5、同社は現在その見直しと再編に奔走している。
こうしたサプライチェーンの垂直統合パターンこそが、売上高・純利益の低迷にもかかわらず買い意欲が高まった第一のきっかけであったとみられる。仮に景気後退による落ち込みで自動車販売全体のパイが縮小したとしても、Teslaは自動車メーカーの中で最も影響を受けにくい存在になるとみられる。
第二のきっかけは、CEOのイーロン・マスク氏によるFull Self Driving(「FSD」)の現状に関する発言6であったとみられる。マスク氏は、常時運転者の監視を必要とする「FSD Supervised」が中国で好意的に受け入れられ、しかも国別の専用地図を用いることなく展開できたと述べており、これは技術的実現性における一つの到達点を示すものだという。「FSD Supervised」は今年後半に欧州でも展開される見込みであり、Model 3、Model Y、Cybertruckは、フリーモント工場およびテキサス工場において、生産ラインから出荷用の集積ヤードに至るまで「FSD Supervised」で走行させることで、訓練データを蓄積している。同社によれば、FSDは北米・中国で1日あたり770万マイル使用されているという。また関連して、同社は2025年6月にテキサス州オースティンでのRobotaxiパイロット版のローンチに向けて計画通り進んでいる。
同社がAIインフラに投じてきた数十億ドル規模の投資によって実現しうる、フリート運用によるマネタイズという潜在的な価値創出こそが、決算内容の悪さにもかかわらず投機的な買いを支えている要因と言える。
第三のきっかけは、マスク氏自身の動向であったとみられる。同氏はトランプ大統領の二期目就任以降、政府支出の効率化を掲げる「政府効率化省」(通称「DOGE」)の立ち上げに長らく深く関与してきた。決算説明会の中でマスク氏は、5月以降DOGEへの関与を週1〜2日程度に縮小する7と述べた。
Teslaのファン層・投資家層のかなりの部分、特に声の大きい層が、マスク氏個人の継続的な関与への期待を軸に形成されていることは周知の事実である。この点が最も如実に表れたのが、取締役会が株主投票により事実上義務付けられる形で、すでに同社株式の約13%8を保有するマスク氏に対し、発行済株式のわずか0.1%相当のストックオプションを付与した一件である。現在の株価水準であっても行使されれば、同社のフリー・キャッシュ・フローを今後何年にもわたって毀損しかねない規模である。このオプションを保有すること自体が、他の大口機関投資家の思惑にかかわらず、同社の将来を左右する確固たる発言権を意味していた。
これほどまでにCEOへの確信が明確な企業であれば、実際には経営の舵を一度も手放していなかったにもかかわらず、また有能な人材層が厚く控えているにもかかわらず、マスク氏が経営の前面に復帰するというニュースが株価上昇につながるのは必然だったと言える。
教科書がどう説くかにかかわらず、市場参加者は常に合理的であるとは限らない。おそらく、そうした教科書こそ書き換えられるべき時期に来ているのだろう。
まとめ
決算説明会での発言、事実、主張の数々は、同社が「純粋なEVメーカー」から「自律走行フリート・サービスプロバイダー」へと進化する転換点にまさに差し掛かっていることを示唆しているように思われる。投機的な観点から言えば、これは同社が今後1年をかけて現実へと近づけていくことを目指す重要なパラダイムである。この思惑だけでも、同銘柄のバリュエーションを「バリュー株」から「グロース株」へと転換させるには十分な根拠となる。もはやBEV製造はイノベーションではなく、自律走行ソリューションこそがイノベーションなのである。
もし決算発表後に株価が下落していたなら、「押し目買い」という見方も成り立ったかもしれない。しかし実際には株価は一度も下落しておらず、これは戦術的・戦略的いずれの立場の機関投資家も、このパラダイムという発想を買い進めていることを示唆している。もちろん、戦術的な投資家は利益確定を望むため、今後1週間程度は株価がやや軟化することも想定される。
既に投資済みのグロース投資家が、売りに加わる大きな理由を見出すことは考えにくい。一方で、同社の変革の投機的な性質は、まだTesla株にエクスポージャーを持たない投資家にとって、大規模に買いを入れる決定的な理由にはならない可能性もある。総じて、強気・慎重の両見方はかなり均衡した状態が続くとみられ、次回決算(すなわちCybercabパイロット版ローンチ後)は非常に注目に値するものとなるだろう。Teslaは引き続き注視すべき銘柄である。
脚注:
1 「2025 Tesla Model Y『Juniper』、効率性と機能を強化して発表」、CarSauce、2025年1月12日時点
2 「Part 583 American Automobile Labeling Act Reports」、National Highway Traffic Safety Administration、2025年4月28日抽出
3 「Teslaは EV生産強化のためリチウム精錬プラントを建設中」、Not a Tesla App、2023年5月10日時点
4 「デトロイトの『ビッグスリー』、ドイツ・日本勢より関税の影響を受けやすい」、JATO Dynamics、2025年4月8日時点
5 「独占:トランプ関税がCybercab・Semi向け中国製部品を直撃、Teslaの米国生産計画に混乱、関係者証言」、Reuters、2025年4月16日時点
6 「Tesla、2025年第1四半期決算説明会でFSD Unsupervised・Robotaxi・FSD値上げの可能性について新たな詳細を明らかに」、Not a Tesla App、2025年4月23日時点
7 「TeslaのマスクCEO、DOGEに費やす時間は来月『大幅に』減少すると発言」、CNBC、2025年4月22日時点
8 「2025年、イーロン・マスク氏のTesla保有比率はどれくらいか?」、CEO Today Magazine、2025年4月1日時点