ネオクラウド事業者のNscaleは、近く上場企業になる可能性があります。Bloombergによると、同社は早ければ9月の新規株式公開(IPO)を計画しています1。
この記事では、このAIインフラ銘柄に対する強気の見方を掘り下げます。多くの投資家が同社のIPOに期待を寄せる理由を紹介します。
急速な売上高成長
まずは、同社の売上高成長から見ていきましょう。その伸びは目覚ましいものです。
Nscaleは最近、出資を検討している投資家に対し、2026年第2四半期の売上高が1億ドルを超えたと説明しました2。これに対し、2026年第1四半期は約3,700万ドル、2025年通年では約3,300万ドルでした。
このように、同社はAIブームの中で急成長を遂げています。なお、Bloombergによると、契約済み売上高の総額は510億ドルに上ります2。

出典:Investing.com、2026年8月6日時点
フルスタックのAIサービス
同社がこれほど急速に成長している理由はいくつかあります。その一つが、AIの技術スタック全体にわたって事業を展開し3、組織に次のようなサービスや設備へのアクセスを提供していることです。
- GPU・CPUの計算資源:Nscaleは、組織の運用要件に合わせてカスタマイズされた専用GPUインフラを提供しています。
- AIソフトウェアプラットフォーム:Nscale Cloudは、専用の推論処理、カスタマイズ可能な環境、KubernetesやSlurmなどの管理ツール、企業向けのID・アクセス管理(IAM)、セキュリティ機能を提供しています。
- データセンター:Nscaleは、英国、ノルウェー、ポルトガル、アイスランド、北米で、用途に特化して設計されたモジュール式の液冷データセンターを運営しています。
- エネルギー・電力:Nscaleは、需要家側の設備内での発電(ビハインド・ザ・メーター)とマイクログリッド機能を提供し、顧客が電力系統への接続に伴う数年単位の待機を回避できるようにしています。
多様な顧客基盤
第二の成長要因は、多様な顧客基盤です。CoreWeaveやNebiusなどの他のネオクラウド事業者と同様に、Nscaleは大規模クラウド事業者、巨大テクノロジー企業、最先端AIの研究開発機関、基盤モデルの開発企業を顧客に持っています。
一方で、AI主権の確保を目指す欧州各国の公的機関や、欧州のプライバシー規制およびAIガバナンス規制の下で事業を展開する欧州企業にもサービスを提供しています。これらの顧客にとって、Nscaleがロンドンに本社を置き、欧州にデータセンターを保有していることは大きな魅力です。
事業拡大計画
強気の見方を支えるもう一つの柱が、同社の事業拡大計画です。現在、Nscaleは約25,000基のGPUを稼働させており、約830MW規模の計算インフラを提供しています2。
しかし、今後は10GW規模の計算インフラを目指しています2。Bloombergによると、同社は約194,000基のNvidia Vera Rubin GPUを含む、合計264,000基のGPUの調達契約を結んでいます1。
エネルギーコストとインフラ面での優位性
Nscaleが、安価な再生可能エネルギーを利用できることによる構造的なコスト優位性を持っている点も注目に値します。このエネルギーへのアクセスは、同社がビットコイン採掘企業Arkon Energyから分社化される前に確保されたものです。安価なエネルギーを利用できることで、電力・冷却コストを低く抑えられると期待されます。
さらに、同社には電力系統への接続待ちを回避できる能力があります。需要家側の設備内での発電とマイクログリッド機能により、Nscaleは数年に及ぶ電力系統への接続待ちを回避できる可能性があります。
著名な出資者
最後に、Nscaleの出資者にも注目する価値があります。同社の資金調達の歴史を見ると、著名な企業が名を連ねています。
Nscaleに出資しているテクノロジー企業にはNvidia、Dell、Nokia、Lenovoがあり、同社を支援している投資会社にはAker ASA、Jane Street、Blue Owl、Point 72があります。なお、シリーズBの資金調達ラウンド4とシリーズCの資金調達ラウンド5は、いずれも各シリーズで欧州史上最大となりました。
IPOに備える
要約すると、NscaleはAIインフラ分野の有力企業となるための好条件を備えているように見えます。エンドツーエンドのフルスタックAIサービスと、低コストの再生可能エネルギーへの直接アクセス、独立したマイクログリッド機能を組み合わせることで、同社はAI業界の根本的なボトルネックである計算能力と電力確保の課題に取り組んでいます。
前四半期比で加速度的に伸びる売上高、510億ドルの契約済み受注残高、NvidiaやDellといったテクノロジー大手による強力な出資支援など、同社には投資の観点から多くの魅力があります。投資家は最終的に、事業計画の実行リスクや企業評価額に関するリスクを長期的な成長可能性と比較検討することになりますが、9月に実施される可能性のあるIPOは、大きな注目を集める一大イベントとなるかもしれません。
脚注:
1Investing.com「Nscale、AIデータセンター建設ラッシュの中、米国IPOで30億ドルの調達を目指す」、2026年8月21日時点
2Investing.com「Nscale、9月のIPOを前に契約済み売上高510億ドルを報告 ― Bloomberg」、2026年8月6日時点
3Nscale「Nscale.com」、2026年8月12日時点
4Nscale「Nscale、欧州史上最大となる11億ドルのシリーズB資金調達を実施」、2025年9月25日時点
5Nscale「Nscale、欧州史上最大となる20億ドルのシリーズC資金調達を実施」、2026年3月9日時点