
Salesforceは今年、まさに「激戦銘柄」となっている。AIによる破壊的影響のリスクを抱えるテクノロジー株と見る投資家がいる一方で、自らAIソリューションを展開しつつ比較的低いバリュエーションで取引されるブルーチップのソフトウェア企業と見る投資家もいる。
Salesforceは先日、2026会計年度第2四半期1の決算を発表した。内容は総じて非常に堅調であり、AIが同社の事業をまだ破壊していないことを示唆している。以下では、主要な数字と第2四半期決算説明会からの要点を見ていく。
堅調な売上高・利益成長
7月31日に終了した四半期において、Salesforceの売上高は102.4億ドルとなり、前年同期比10%増(為替一定ベースでは9%増)を記録した。これはコンセンサス予想の101.4億ドルを上回るものだった。
同期間の非GAAPベースの一株当たり利益(EPS)は2.91ドルとなり、予想の2.78ドルを上回った。これは前年同期比14%増となる。
利益率については、粗利益率が前年の77%から78%へ上昇した。一方、非GAAPベースの営業利益率は33.7%から34.3%へと上昇した。
こうした好業績を受け、同社は既存の自社株買いプログラムを200億ドル増額し、承認総額を500億ドルとすると発表した。なお、同社の時価総額は現在約2,300億ドルであり、かなりの規模の自社株買いを実施していることになる。

AI・データ事業の力強い成長
同社のエージェント型AI(Agentforce)およびデータ事業(Data Cloud)に焦点を当てると、成長は力強く、年間経常収益(ARR)は前年同期比120%増の12億ドル超となった。四半期末時点でAgentforceの有料顧客数は6,000社超となり、第1四半期末の4,000社から増加した。興味深いことに、同社は第2四半期のData CloudおよびAgentforceの受注額の40%超が既存顧客の利用拡大によるものだったと説明している。これは、顧客が同社のAI・データ事業に大きな価値を見出し、同社との関係をより深めようとしていることを示唆している。
第3四半期・通期ガイダンス
ガイダンスについて、Salesforceは第3四半期の売上高を102.4億〜102.9億ドル(前年同期比8〜9%増)と見込んでいる。通期の売上高は411億〜413億ドル(前年同期比8.5〜9%増)を見込む。通期のEPSは11.33〜11.37ドルになる見通しで、決算発表前のアナリスト予想(11.31ドル)を上回る水準だ。キャッシュフローについては、通期の営業キャッシュフローを約150億ドルと見込んでおり、前年同期比12〜13%増となる計算だ。
決算説明会からの要点
決算説明会では、AIに関する話題に多くの焦点が当てられた。アナリストらはAgentforceの成長についてより詳しく知りたがるとともに、AIが同社の中核事業に及ぼす破壊的影響への懸念を取り上げた。
Agentforceについて、同社は引き続き大きな成果を上げていると説明し、第2四半期にはパイロット段階から本番導入に移行した顧客数が前四半期比60%増加したとしている。なお8月には、導入のハードルを下げ試験利用を促すため、従量課金制を含むAgentforceの柔軟な新しい支払いオプションを発表している。マネタイズについて経営陣は、導入サイクルはまだ初期段階にあるとしつつも、AIの収益化能力には自信を持っていると強調した。現時点では顧客への価値提供に注力しており、これが時間の経過とともに中核製品全体でより深い価値の創出につながると考えている。
中核事業に対するAIの脅威については、マーク・ベニオフCEOが、AIがSaaS(Software as a Service)を消滅させることはないとの見方を示した。同氏の見解では、質の高いデータを用いて適切に実施すれば、AIはSaaSの「本質的な拡張」につながり得るという。なお、ベニオフ氏はMITの統計で、AIパイロットプロジェクトの95%が失敗しているという点にも言及した。同氏は、Agentforceは事情が異なり、自社の顧客からは「驚異的な成果」を得ているとの声が寄せられており、人間とAIエージェントが協働することで新たなレベルの顧客成功を生み出していると述べた。

決算説明会では、経営陣は資本配分戦略についても言及した。これは、収益性の高い成長を後押しするための規律ある投資を行うと同時に、自社株買いや配当を通じて株主に資本を還元していくというものだ。同社はここで、Convergence.ai、Bluebirds、Regrelloの買収を含め、エージェント型AIのロードマップを加速させるための戦略的投資を最近行ってきたと述べている。これらの資産は、Salesforceの顧客に対して新たな価値あるデータとエージェント機能を引き出す助けとなるとみられる。
ウォール街のアナリストは強気姿勢を維持
第2四半期決算以降、ウォール街の複数の証券会社がCRM株に対する「買い」の投資判断を維持している。目標株価385ドル2を掲げるゴールドマン・サックスもその一社だ。同社は、AIがSalesforceのSaaS事業を破壊するのではなく、むしろ「複数年にわたる追い風」になるとみている。また、同社は今後数年間でサブスクリプション売上高の約10%成長を維持しつつ、営業利益率を35〜40%まで拡大できる可能性があるとしている。
ジェフリーズのアナリスト、ブレント・ティル氏も決算発表後にCRM株の「買い」判断を再表明3した。同氏の目標株価は現在375ドルだ。ティル氏は、SalesforceのAI関連売上高は現時点ではまだ小さいものの、今後数年間で成長し、より重要な存在になっていくとの見方を示した。また、Salesforceの成長ペースは一部の他のAI企業ほど速くはないものの、同社のソフトウェア株としてのバリュエーションは過去10年間で最も低い水準にあると指摘している。
なお、LSEGによると、CRM株の平均目標株価は現在346ドルとなっている。この目標株価が現在の株価を大きく上回っていることを踏まえると、今後12カ月間注目に値する銘柄と言えるかもしれない。投資家は、10月14〜16日に開催されるDreamforce 2025において、同社のAI事業に関するさらなる情報を得られる可能性がある。
脚注:
1 Salesforce Reports Record Second Quarter Fiscal 2026 Results、2025年9月3日時点
2 Investing.com、Goldman Sachs reaffirms Buy rating on Salesforce stock amid AI optimism、2025年9月4日時点
3 Yahoo Finance、Salesforce is the 'slowest growing' in software, but still a Buy、2025年9月3日時点