
人工知能(AI)技術は今、急速に普及が進んでいます。例えばChatGPTの週間利用者数は現在4億人1に達しており、これは6カ月前の約2倍の水準です。
ChatGPTのようなアプリは印象的ではあるものの、AIの可能性のほんの一端を示しているに過ぎません。今後は、自律的に稼働し事業の生産性を大きく高めることができる高度なソフトウェアシステムである「AIエージェント」への移行が進むと見られます。
このトレンドの恩恵を受ける有利な立場にあると見られる企業の一つがSalesforceです。さまざまなビジネス上のやり取りを自律的に処理するよう設計されたAIエージェント「Agentforce」を擁する同社は、AIの次なるフェーズにおいて強力な存在となる可能性があります。
CRMからエージェンティックAIへの転換
1999年に設立されたSalesforceは、これまで顧客関係管理(CRM)ソフトウェア企業として知られてきました。現在では世界150,000社2を超える顧客にCRMソリューションを提供し、年間売上高は300億ドル3を超えています。
しかし近年、同社はインテリジェントな自動化を通じて顧客サービスと営業に革命を起こすべく、エージェンティックAI技術へと軸足を移しています。デジタル労働力プラットフォームともいえるAgentforceソリューションは、顧客や従業員に専門的かつ常時対応可能なサポートを提供するよう設計された、プロアクティブで自律的なAIアプリケーションです。

まだ初期段階ではあるものの、この新技術には大きな可能性があるようです。SalesforceのAIエージェントは、一連のタスクを自ら開始・完了させ、自然言語での会話に対応し、業務データから関連性の高い回答を提供することができます。
つまり企業は、見込み客とのやり取りや顧客からの問い合わせ対応を24時間体制で行うためにこれを活用できます。Agentforceの力を活用することで、小売、金融サービス、ヘルスケアなど幅広い業界の企業が生産性を大幅に高められる可能性があります。
わずか数カ月で有料顧客3,000社を獲得
Salesforceの直近の第4四半期決算説明会で、CEOのMarc Benioff氏は顧客が同社のAI技術で成果を上げていると述べ、導入ペースが急速であると強調しました。同氏は投資家に対し、「これほどのレベルで成長する製品を見たことがない。特にAgentforceは別格だ」と語りました。
注目すべきは、この技術がリリースされてからわずか90日で、Salesforceはすでに3,000社の有料Agentforce顧客を獲得していたことです。全体では、10月以降にAgentforceの契約を5,0004件成立させています。
決算説明会でBenioff氏は、すでにこの技術を活用して効率化を進めているいくつかの顧客事例を紹介しました。その一つがOpenTableです。Agentforce導入からわずか3週間で、レストランへのウェブ問い合わせの73%をこの技術で処理できるようになりました。これは従来の自動化ツールと比較して50%の改善です。
Benioff氏が紹介したもう一つの事例がGoodyearです。フィールドサービス向けAgentforceを活用することで、このタイヤメーカーは現地試験の予約を自律的にスケジュール調整し、技術者への車両関連の質問対応を支援することで効率を高めています。このほか、Singapore Airlines、Gucci、SharkNinja、Equinoxなどもこの技術を活用しています。Benioff氏によると、顧客はかつてない水準の生産性、効率性、コスト削減を実感しているといいます。
Salesforce自身もAgentforce技術を活用している点は注目に値し、その成果は数字が物語っています。10月に同社のヘルプポータルで導入されて以降、Agentforceは380,0004件のサービスリクエストを自律的に処理し、解決率は84%に達しました(人へのエスカレーションが必要だったのはわずか2%)。Benioff氏は、「我々のデジタル労働力は数万件に及ぶ顧客サービスの問い合わせを解決しており、人間の従業員はより繊細な課題や顧客関係の構築に注力できるようになっている」とコメントしています。
Salesforceの差別化要因
現在、エージェンティックAIに取り組む企業は数多く存在します。しかし、Salesforceが優位性を持つ可能性がある点は、その統合されたアーキテクチャにあります。Benioff氏は、AIエージェントが効果的に機能するためには、アプリ、データ、エージェントという3つの重要な要素が連携して機能する必要があると考えています。そしてSalesforceのプラットフォームは、この3つの重要なレイヤーを調和させるよう設計されています。
まず、Agentforceはすべてのアプリが共通のコアとフレームワーク上に構築されているSalesforceのエコシステムと深く統合されており、一貫したデータ処理を実現しています。次に、同社のData Cloudサービス(最近、記録件数が50兆件4を突破)は顧客データを集約し、シームレスなデータ取得を可能にすることで、エージェントが顧客とのやり取りの際に文脈情報にアクセスできるようにする可能性があります。

調査によると、Agentforceの導入は、エージェンティックAIソリューションを自社開発するよりもはるかに効率的であることが示されています。Futurum Groupの調査によれば、AgentforceはROI(投資収益率)を自社開発ソリューションと比べて5倍速く達成できる一方、コストを20%削減できます。一方、テクノロジー分析会社Valoirの調査では、Agentforceは自社開発と比べて16倍速く自律型AIエージェントを提供でき、精度も75%高いことが判明しています5。
とはいえ、全体的な納入台数は明らかに減速の兆しを見せ始めています。生産と納入のわずかな乖離は、今後工場稼働が抑制される可能性を示唆しており、在庫動向は納入動向に対して在庫過剰であることを示しています。
12兆ドル規模の市場機会?
もちろん、AIエージェントの導入サイクルはまだ初期段階にあります。そのためSalesforceは、2026会計年度におけるグループ売上高への貢献は緩やかなものにとどまり5、2027会計年度により大きく貢献すると見込んでいます。
Benioff氏によると、デジタル労働力の市場規模は3兆ドルから12兆ドルの間になり得るとされており5、Salesforceには長期にわたる成長余地が残されている可能性があります。
脚注:
1 ZDNET.com、ChatGPT's user base just doubled in 6 months - to more than 400 million weekly users、2025年2月24日時点
2 Salesforce.com、2025年4月時点
3 Salesforce.com、Salesforce Announces Fourth Quarter and Fiscal Year 2025 Results、2025年2月26日時点
4 CRM Q4 FY25 Earnings Press Release w financials、2025年2月26日時点
5 S&P Global Market Intelligence、Salesforce, Inc. NYSE:CRM FQ4 2025 Earnings Call Transcripts、2025年2月26日時点