Salesforce(セールスフォース)株は2025年、市場を大幅にアンダーパフォームしている。「AIがソフトウェアを飲み込む」というナラティブに打撃を受け、株価はおよそ4分の1を失った。しかし、Salesforce自身もAI分野で積極的に事業を展開しており、この1年間、成長を後押しする強力なソリューションを着実に展開してきた。10月中旬に開催された「Dreamforce 2025」カンファレンスで明らかになった、これらのAIソリューションと同社の今後の展望について見ていく。
「Agentforce 360」の発表
Dreamforce 2025において、Salesforceは「Agentforce 360」を発表した。これは2024年10月に初めて発表されたエージェント型AIプラットフォームの最新版である。Agentforce 360は世界中で利用可能であり、営業、サービス、マーケティング、サプライチェーンなど、あらゆる業務機能で活用できる。目的は、人間とAIエージェントを一つの信頼できるシステムでつなぎ、あらゆる企業がこれまでにない知性とスピードで事業を運営できるようにすることだ。
Agentforce 360には、以下のような強力な新機能が搭載されている。
Agentforce Builder:自然言語を使ってAIエージェントの設計、テスト、デプロイをチームで行える、対話型の開発スタジオ。
Agentforce Vibes:自然言語のプロンプトを使ってアプリやダッシュボードを構築できるコーディングツール。
Agentforce Voice:双方向の音声コミュニケーションをエージェントのワークフローに直接統合する機能。
Salesforceは、Agentforce 360を「エンタープライズの未来」と位置づけている。すべてのAIエージェントの信頼できるデータ基盤である「Data 360」プラットフォームに支えられ、あらゆるやり取りの中心にAIとデータを据えている。

OpenAIおよびAnthropicとの新たな提携
Dreamforceでは、SalesforceがOpenAIおよびAnthropicとの提携を拡大し、両社のAIモデルをAgentforce 360プラットフォームに直接統合したことも発表された。OpenAIとの提携により、ユーザーはChatGPT内から直接Agentforce 360にアクセスし、データ操作やTableauの可視化作成を行えるようになる。一方、AnthropicのClaudeモデルは、Salesforceのセキュアなクラウド環境を通じて、金融サービス、ヘルスケア、サイバーセキュリティなど規制の厳しい業界の顧客に提供される。これらのテック企業の強力なAI技術を活用することで、同社は規制の厳しい業界を含む、より幅広い企業層へのアピールを狙っている。
Agentforceの利用企業が増加
Agentforce 360の導入状況について、Salesforceは現在12,000社の顧客がこのプラットフォームを利用していると発表した1。同社が紹介した事例には以下のようなものがある。
Reddit:Agentforceの活用により、サポート案件の46%を自動対応で処理し、解決時間を84%短縮。平均応答時間は8.9分から1.4分に短縮された。
Adecco:人材サービス大手のAdeccoは、Agentforceを活用し、通常の勤務時間外における求職者とのやり取りの51%をAIエージェントで対応できるようになった。
OpenTable:レストラン予約サービスのOpenTableは、Agentforceを活用し、利用者およびレストランからの問い合わせの70%を自律的に解決できるようになった。
導入拡大の結果、この事業領域の収益は急速に伸びている。7月31日に終了した直近四半期において、同社はエージェント型AIから4億4,000万ドルの年間経常収益(ARR)を計上した2。
長期的な成長率の見通しを引き上げ
Agentforceの成功を受け、Salesforceは2030年までに年間売上高が600億ドルを超えると見込んでいる2。この数値は、直近のInformatica買収の影響を除いたもので、2025会計年度比で58%の増加となる。イベント開催前、アナリストは2030年までの売上高を約584億ドルと予想していた3。つまり、今回の売上高見通しはウォール街の予想を上回るものだった。
なお、Salesforceは今後数年間で高水準の収益性を実現することも目指している。2030会計年度末までに、「Rule of 40」スコア50を目標としている。

株主還元の拡大を発表
最後に、同社は今後6ヶ月間で70億ドルの自社株買いを実施すると発表した。これは9月に発表した200億ドルの自社株買いに続くものだ。
JPモルガンのアナリストは、今回の新たな自社株買いは、Salesforceの売上高、受注額、フリーキャッシュフローの強さに対する自信の表れだと指摘している。同社は現在、このソフトウェア株に365ドルの目標株価を設定しており4、これは現在の株価を40%以上上回る水準だ。
脚注:
1 Sales Force, News Details, 2025年10月13日時点
2 Sales Force, News Details, 2025年10月15日時点
3 Reuters, Salesforce forecasts stronger-than-expected revenue of over $60 billion in 2030, 2025年10月16日時点
4 Investing.com, Salesforce Inc (CRM), 2025年10月21日時点