10月下旬、NvidiaはGTCワシントンDCカンファレンスを開催した1。かつて「AI界のスーパーボウル」とも呼ばれたこのイベントは期待を裏切らず、同社は将来のビジョンを示すとともに、AI技術の普及を加速させる数々の魅力的な提携を発表した。
以下では、このAIカンファレンスのハイライトを振り返るとともに、ウォール街のアナリストの反応についても見ていく。
NvidiaのAIビジョン
GTCワシントンDCにおいて、Nvidiaのジェンスン・フアンCEOはAIを新たな産業革命と位置づけた。このイベントの中心テーマは、この新たな技術時代において、AIインフラを拡張する米国の能力が極めて重要になるというものだった。
基調講演でフアン氏は、AIエージェント、自動運転車、ヒューマノイドロボットなど、人工知能の魅力的な応用例について語った。また、データセンターが「AIファクトリー」へと変貌していく様子や、Nvidiaが高性能GPUだけでなく、データセンター開発向けの「Omniverse DSX」ブループリントを通じても、こうしたファクトリーの発展において大きな役割を果たすことについても言及した。
フアン氏は、AIが成功を収めるためには2つの大きなプラットフォームシフトが必要だと述べた。一つは汎用コンピューティングからアクセラレーテッド・コンピューティングへの移行、もう一つは従来型の人手によるソフトウェア開発から人工知能への移行だ。同氏は、これらのプラットフォームシフトが、米国の技術を用いてNvidiaがイノベーションを起こす一生に一度の機会だと指摘した。

米テック企業との戦略的提携
この目標の実現に向けて、Nvidiaは様々な業界での技術普及を加速させるため、米国企業との幅広い提携を開始した。提携先の一部は以下の通りだ。
Uber:Nvidiaは、世界最大級のレベル4対応モビリティネットワークの拡大に向けてUberと提携した2。自動運転プラットフォームとソフトウェアを通じて、2027年を皮切りに、Uberのグローバルな自動運転車両を最終的に10万台規模まで拡大することを支援する計画だ。
Palantir:Nvidiaは、オペレーショナルAI向けの統合型テクノロジースタックを世界で初めて構築するため、Palantirと協業している3。これには、複雑な企業システムや政府システムを加速・最適化するための機能、参照ワークフロー、自動化機能、カスタマイズ可能な専門AIエージェントが含まれる。
Joby Aviation:Nvidiaは、新しい「IGX Thor」プラットフォームの航空分野におけるローンチパートナーとしてJoby Aviationを選定した4。この協業により、軍用・民生用プラットフォーム双方において、Jobyの自律飛行技術「Superpilot」の開発が進展する見込みだ。
CrowdStrike:Nvidiaは、サイバーセキュリティ向けに常時稼働で継続的に学習するAIエージェントを開発するため、CrowdStrikeと協業していることを発表した5。目的は、クラウド、データセンター、エッジ環境にまたがる重要インフラを防御することだ。
その他の提携
これらの提携に加え、Nvidiaは通信大手Nokia(ノキア)との戦略的提携を発表し6、次世代のAIネイティブ・モバイルネットワークおよびAIネットワーキングインフラの開発・展開を可能にする。これにより、NvidiaのAI-RAN製品がNokiaのRAN(無線アクセスネットワーク)製品群に加わり、通信サービス事業者がAIを活用した5G-Advancedおよび6Gネットワークを展開できるようになる。
Nvidiaはまた、米エネルギー省(DOE)との大型提携を発表し7、7基の新しいAIスーパーコンピューターを構築するとともに、米国の安全保障、科学、エネルギー分野における技術的リーダーシップを推進するAI能力の開発というDOEの使命を支援する。これらのコンピューターの一つである「Solstice System」は、過去最多となる10万基のBlackwell GPUを搭載する予定だ。
一方、量子コンピューティング分野では、NvidiaはGPUコンピューティングと量子プロセッサを組み合わせてアクセラレーテッド量子スーパーコンピューターを構築するためのオープンなシステムアーキテクチャ「NVQLink」の提供開始を発表した8。この技術により、米国のスーパーコンピューティング研究機関が量子プロセッサに接続できるようになり、研究者はハイブリッド型の量子・古典コンピューティングシステムを構築し、化学や材料科学分野における次世代アプリケーションの開発を加速できるようになる。
Blackwell GPUへの高い需要
GTCイベントでジェンスン・フアン氏が、同社のBlackwellチップへの需要について言及した点も注目に値する。同氏は、生産開始から最初の3.5四半期で600万基のBlackwell GPUを出荷しており、需要は依然として非常に高い水準にあると述べた。現在フアン氏は、今後5四半期でBlackwellと次世代のRubinチップを合わせて5,000億ドルのGPU売上を見込んでいる。これは、前世代GPUであるHopperの成長率の5倍に相当する。
Nvidia株の新たな目標株価
GTCワシントンDCイベント以降、アナリストはNvidia株の目標株価を相次いで引き上げている9。現在、ウォール街で最も高い目標株価は350ドルで、Loop Capitalのアナリストによるものだ。これに次ぐ水準としては、Cantor FitzgeraldとMelius Researchが300ドル、BofA Securitiesが275ドルの目標株価を設定している。現在の平均目標株価は227ドルで、これは現在の株価を約10%上回る水準であり、コンセンサスとしてはNvidia株が引き続き上昇するとの見方が示されている。
脚注:
1 NVIDIA official YouTube channel, NVIDIA GTC Washington, D.C. Keynote with CEO Jensen Huang, 2025年10月28日時点
2 NVIDIA Newsroom, NVIDIA Makes the World Robotaxi-Ready With Uber Partnership to Support Global Expansion, 2025年10月28日時点
3 NVIDIA Newsroom, Palantir and NVIDIA Team Up to Operationalize AI — Turning Enterprise Data Into Dynamic Decision Intelligence, 2025年10月28日時点
4 Investor Relations, Joby Taps NVIDIA to Accelerate Next-Era Autonomous Flight; Named Launch Partner of IGX Thor Platform, 2025年10月28日時点
5 NVIDIA Newsroom, NVIDIA and US Technology Leaders Unveil AI Factory Design to Modernize Government and Secure the Nation, 2025年10月28日時点
6 NVIDIA Newsroom, NVIDIA and Nokia to Pioneer the AI Platform for 6G — Powering America's Return to Telecommunications Leadership, 2025年10月28日時点
7 NVIDIA Newsroom, NVIDIA and Partners Build America's AI Infrastructure and Create Blueprint to Power the Next Industrial Revolution, 2025年10月28日時点
8 NVIDIA Newsroom, NVIDIA Introduces NVQLink — Connecting Quantum and GPU Computing for 17 Quantum Builders and Nine Scientific Labs, 2025年10月28日時点
9 Investing.com, NVIDIA Corporation (NVDA), 2025年10月28日時点