この1年、暗号資産市場にとって特筆すべき期間となった。ビットコインが50%超上昇する1など極めて好調なパフォーマンスを見せただけでなく、イーサリアムやXRPといった他の資産も大幅な上昇を記録した。
本稿では、最近の暗号資産価格の力強さを支える主な要因を探るとともに、デジタル資産の強気相場から恩恵を受けている暗号資産関連株についても紹介する。
ビットコイン需要は拡大を続ける
かつてビットコイン需要は個人投資家が中心だったが、状況は様変わりした。現在では個人投資家と機関投資家の双方から需要が寄せられており、両者が合わさって価格を大きく押し上げている。
個人投資家側では、使いやすい取引所やアプリの登場により、新規投資家が市場に参入しやすくなっている。もはや不透明な海外のデジタル資産プラットフォームを利用する必要はなく、現在ではCoinbase、Robinhood、PayPal、WeBullといった、よく知られた信頼性の高いプラットフォームで暗号資産を取り扱えるようになった。つまり、スマートフォンさえあれば誰でも簡単に市場へのエクスポージャーを得られるということだ。
個人投資家の暗号資産への関心は、iShares Bitcoin Trust ETFやGrayscale Bitcoin Trustといった上場投資信託(ETF)、およびBitMine Immersion Technologiesのような上場商品の登場によっても後押しされている。これらの商品は、投資信託や株式と同様、通常の証券口座を通じてアクセスできるため、かつてないほど容易にこの資産クラスへのエクスポージャーを得られるようになった。
さらに、暗号資産に前向きな新しい規制も、個人投資家の関心を支える重要な要因であり続けている。例えば英国では、金融行為監督機構(FCA)が最近、特定の暗号資産担保型上場投資商品(ETP)の個人投資家向け販売禁止を解除した。これにより、数千人の投資家が初めてこの資産クラスを取引できるようになった。
特にミレニアル世代とZ世代を中心とする若年層の投資家が、積極的に暗号資産をポートフォリオに組み入れている点は注目に値する。これは、かつて株式と債券にほぼ限定されていた従来型の資産運用モデルを根本から変えつつある。既存の金融機関に対する懐疑心を背景に、これらの世代は暗号資産を投機的資産としてではなく、現代的で分散されたポートフォリオの中核的な柱として捉えている。
こうした投資家にとって、暗号資産の非中央集権的な性質や、金融エコシステムにおける「デジタルゴールド」としての役割は大きな魅力となっている。また、上振れ余地が当初の投資リスクを大きく上回りうる、非対称的なリターンの可能性も強い魅力となっている。
機関投資家による「グレート・アキュムレーション」
個人投資家による暗号資産への需要が引き続き堅調である一方、この1年で最も大きな市場の牽引役となったのは、間違いなく機関投資家による需要だろう。ここでの需要は、資産運用会社、ファミリーオフィス、アセットマネージャー、ヘッジファンド、そして企業の財務部門など、幅広い主体からもたらされている。
機関投資家が今日、暗号資産に注目する理由は複数ある。多くの主体にとって、それは分散投資のツールである。例えば、資産運用会社やファミリーオフィスは、オルタナティブ資産配分の中に暗号資産を組み入れる動きを強めている。これらの企業は、この資産クラスを通貨の減価やマクロ経済の不安定性に対するヘッジ手段と捉え、投資家のポートフォリオをよりバランスの取れたものにしようとしている。
資産運用会社にとって、米国など主要市場でビットコインETFが承認されたことは、間違いなくゲームチェンジャーとなった。これらの商品は、伝統的金融とデジタル金融の間のギャップを実質的に埋め、規制下でアクセスしやすいビットコインへのエクスポージャーを提供している。
ファミリーオフィスにとっては、若い世代がフィンテックや非中央集権型資産に関心を持っていることが、デジタル資産導入の明確な牽引役となっている。ゴールドマン・サックスの「2025年ファミリーオフィス投資インサイトレポート」によると、現在ファミリーオフィスの約33%が暗号資産に投資しているという2。
アセットマネージャーに目を向けると、現物ビットコインETFの領域で活動する機関の数は大幅に増えており、これらの企業は発行するETF口数の裏付けとなるビットコインを購入している。例えば、世界最大のビットコインETFであるiShares Bitcoin Trust ETFは現在、約80万BTCを保有している3。
ヘッジファンドのようなよりアクティブな機関投資家にとって、暗号資産への投資は市場の方向性に対する戦略的な賭けとなることが多い。これらの企業は金融市場の急激な値動きを収益機会として狙っており、ビットコインのボラティリティは本質的に魅力的だと言える。
最後に、暗号資産を貸借対照表上の中核的な戦略資産にしようと、ビットコインを買い進めている企業群がある。これらの企業の一部は、現金や債券から供給量が固定された資産への分散を狙っている。また別の企業は、投資家がビットコイン価格に積極的に賭けるための手段を提供することを目的としている。現在、貸借対照表にビットコインを保有する上場企業は70社を超える4。
暗号資産ブームの恩恵を受ける銘柄
暗号資産ブームへのエクスポージャーを得る最も分かりやすい方法はデジタル資産そのものへの投資だが、この資産クラスへの間接的なエクスポージャーを提供する上場銘柄も数多く存在する。そして、デジタル資産の強気相場を背景に、これらの銘柄の多くは現在非常に好調なパフォーマンスを見せている。
現在好調な市場分野の一つが取引プラットフォームだ。Coinbase、Robinhood Markets、Futu Holdingsといった銘柄は、個人投資家の暗号資産への関心の高まりから恩恵を受けている。これらの企業が暗号資産エコシステムの他のプレーヤーに対して持つ強みの一つは、収益が通常取引高に連動するため、価格の上昇局面・下落局面のいずれからも恩恵を受けられる点だ。これは、価格上昇局面でしか恩恵を受けにくい典型的な暗号資産マイナーとは対照的である。Robinhoodに注目すると、同社は今年S&P 500指数の中で最もパフォーマンスの良い銘柄となっているが5、2025年第2四半期の暗号資産関連収益は1億6,000万ドルで、前年同期比98%増となった6。
暗号資産インフラ関連企業も、現在好調な業績を見せている。Circle InternetやGalaxy Digitalといった企業がこれに含まれる。8月には、時価総額で世界第2位の米ドル建てステーブルコインの発行体であるCircleが、2025年第2四半期に53%の増収を記録した。さらに最近では、暗号資産業界に機関投資家向けサービスを提供するGalaxy Digitalが、2025年第3四半期に223%の増収を発表した7。
暗号資産価格が上昇基調にある中、MARA HoldingsやRiot Platformsといったマイニング企業も当然のことながら好調だ。これらの企業にとって、ビットコイン価格の上昇はそのまま収益の増加につながる。近年、マイニング企業がエネルギー消費の問題に対応するため、クリーンエネルギーや未利用・余剰エネルギーの活用を進めている点も注目される。水力、太陽光、風力、原子力といったクリーンエネルギー源で事業を稼働させるマイナーがいる一方、フレアガス(随伴ガスの焼却処理)のように、本来であれば無駄に廃棄・大気放出されるエネルギーを活用するマイナーもいる。
暗号資産財務戦略企業については、2025年のパフォーマンスはまちまちとなっている。マイケル・セイラー氏率いるStrategy(旧MicroStrategy)は、ビットコイン保有量が年初の約44万7,500BTCから現在は約64万BTCへと増加しているにもかかわらず、株価はさほど上昇していない8。一方、暗号資産マイニングと財務管理のハイブリッドモデルを展開するBitMine Immersion Technologies(通称「BMNR」)は急騰しており、6月に8ドルで当初の資金調達を行った後、現在は50ドル近辺で取引されている。
暗号資産エコシステムは活況を呈している
結論として、現在の暗号資産市場の上昇は、これまでのブームとは本質的に異なるように見える。過去の強気相場とは異なり、今回の上昇は、デジタルに精通した個人投資家から強力な機関投資家まで、幅広い投資家層からの需要によって支えられている。
この強気相場は、Robinhood MarketsやCoinbaseのような取引高の多い取引プラットフォーム、Circle InternetやGalaxy Digitalといった主要インフラ企業、そしてMARA Holdingsのようなクリーンエネルギー重視のマイニング企業など、幅広い上場暗号資産関連銘柄を押し上げている。新たな規制が追い風となり、機関投資家の資金が市場の厚みを生み出す中、暗号資産エコシステムは活況を呈している。
脚注:
1 Google Finance, 2025年10月22日時点
2 Goldman Sachs Releases 2025 Family Office Investment Insights Report, 2025年9月10日時点
3 BlackRock, iShares Bitcoin Trust ETF, 2025年10月22日時点
4 CoinDesk, The Great Accumulation: A Corporate Race for Bitcoin, 2025年2月5日時点
5 Slick charts, S&P 500 Component Year to Date Returns, 2025年10月22日時点
6 Robinhood, Robinhood Reports Second Quarter 2025 Results, 2025年7月30日時点
7 Galaxy Announces Third Quarter 2025 Financial Results, 2025年10月21日時点
8 Strategy, Purchases, 2025年10月22日時点